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長野県松本市 ユニセックス セレクトショップ Simon's&co.(サイモンズ&コー.)

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2015年1月17日土曜日

20 : never let go


こんばんは。

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雪/曇り


20

成人したばかりの人の人生がすっぽり入るんだ。
そう思うと少し不思議な気がします。

阪神淡路大震災当日、
私は高校生でした。
熟睡している所を、
誰かにベッドの下から強烈に蹴り上げられた様な激しい衝撃で目を覚まし、
その後暫くは激しい横揺れを横たわったまま味わいました。
神経を疑われそうですが、
私自身若かったせいもあり、
悪夢で上昇した心拍を宥(なだ)めようとする人の様に、
今一度眠りに就こうとしました。
余震が収まって少し経って、
階下にいた母が血相を変えて走り込んで来て、
「大丈夫だった?」と私に尋ねた(怒鳴った)時、
こういう時は目覚めているべきなんだと知りました。

私の実家はライフラインが止まっただけで済みました。
幾人かの友人の自宅は半壊または全壊。
それに比べれば、
水やガスが通じない事は大きな障害では無かったと思います。
何より、
家族が無事でした。

そんな私だからか、
震災について語るのは今でも難しく思えます。

震災後に父と歩いた神戸の街並が、
しっかりと脳裏に焼き付いています。
あの家屋の潰れ方だったら...。
あのビルの倒れ方だったら...。
この延焼の仕方だったら...。
高校生だったので、
少なくとも想像は出来ました。
若干息苦しい防塵マスクを通してさえ、
灰や塵の匂いがしました。
音の無い廃墟と化した街を父と歩きながら、
「突如失われた生活について考えました」、
と言えば嘘になります。
正確には、
何も考えられなかった。
余りにも被害が広域に及び、
歩けども歩けども廃墟から抜け出す事が出来ず、
どんどん心が息苦しくなって行きました。
もう許して欲しかった。
それでも、
あの光景は見ておいて良かったのだと今になって思います。

少し時間が流れ、
私は神戸にある大学に通う様になりました。
私が大学生になった頃の神戸は、
震災前や震災後とは「別物」かと思える程、
「綺麗」になっていました。

復旧・復興

沢山の人たちの尽力で、
驚異的な早さで甦った街。

ところが、
大学の体育の授業が行われたポートアイランドの光景は、
きらびやかに甦った三宮の街とは正反対でした。
大学のグラウンドの背景に犇(ひし)めく仮設住宅。
見えない所に追いやられた被災者。
復興の光と陰。
その様に感じない訳にはいきませんでした。
グラウンドにいる間、
いつも心がそわそわしていました。


昨晩聴いたニュースで知ったのですが、
昨年1年間に阪神淡路大震災の被災者の約50名が、
孤独死しているのだそうです。

復旧・復興

先日、
東日本大震災の被災者の方が、
「人々の記憶が風化している様で怖い」
と仰っているのを耳にしました。

風化

残念ながら、
良いものも悪いものもを含め、
記憶は薄れて行くものです。
忘れようとか蔑(ないがし)ろにしようとか、
そんな風に思ってのことではありません。
日常を一生懸命生きている内に、
自然と薄れて行くだけなのです。
ですので、
かえって記念日にだけ「覚えていよう」、
と軽々しく決意を口にするのは、
安易だし偽善的ですらあると思えてしまいます。

ある程度の規模を持って「共通性」を獲得した事象だけが
以降の年表に載る事になるのだと思いますが、
誰かひとりでも家族を失った方にとって、
事象に大きい小さいはありません。
災害のみならず、
事故でも病気でもそれは同じだと言えます。

勿論私は、
大きな災害を軽んじている訳ではありません。
その為の備えを意識する機会があるのは、
とても大切な事だと思っています。
その上で私が言いたいのは、
私たちが踏んでいると思っている地面は、
実は思った程「確かなもの」では無いという事です。
生きていると言う事は、
比喩的にですが、
そういう事なのではないでしょうか。

失う事で気付く大事な人の大事さ。
自分が居なくなる事で抱かせるであろうある種の哀しみ。
どちらもが、
命の重み。

震災を体験し、
その後の20年を生きて来る事が出来た中、
考えて来た事、感じて来た事は、
簡素に言えばそういう事だと思います。

一個人の重みは一個人なのです。

'never let you go'.
「離す(忘れる)ものか」
'never let me go'.
「離さ(忘れ)ないで」

声にならない生者と死者のやり取り。
そしてその新陳代謝が、
「今」を紡いでいるのではないでしょうか。

SIMON

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